■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

♪可愛い花   (再録音盤:1967.12発売)
PETITE FLEUR
   作詞:音羽たかし 作曲:Sindney Bechet 編曲:宮川泰
   演奏:レオン・サンフォニエット
   録音:1967.09.28 キングレコード音羽スタジオ
 

一般知名度 私的愛好度 音楽的評価 音響的美感
★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

「可愛い花」デビュー盤の随想はこちら
http://peanutsfan.net/114.html

このアレンジも宮川先生で、演奏は、レオン・サンフォニエットです。
ボサ・ノバ風の当時としては斬新なアレンジですが、今聴いても風化しない良さが
あると思う。耳当たりがよくて、軽やかで、心地よい。
そうかといってあっさり聞き流すような風情でもなく、濃いところもあるのです。
フルートのソロも素敵なんですが、バックの弦が美しい対比を奏でていて切ない。
これは宮川先生屈指の出来ではなかろうか?

面白いことに、この新アレンジ版には、プロモーション・ビデオ画像が存在する。
流れているのはレコードのモノラル音声であるが、そんなものが存在していたとは
現役時代には気づかなかった。ビデオ商品「Pナッツ」に収録されていた。
画像というものは案外、すぐに飽きるもので、そこが純音楽とは異なると思います。
レコードやCDは音の奥行きが深いために、聞き飽きるということがないのです。
視覚と違って日々新たな感覚で聴けるのです。

オリジナルの可愛い花との違いは、もう一つ、マルチトラック録音という可能性。
その場に居たわけではないのですが、この収録は演奏と歌を別々に録っているような
感じを受ける。歌も演奏も音が鮮明ではあるのだが、上手過ぎる感じがする。(笑)
この時期以降の録音は特別な曲を除いてマルチで収録出来るようになったと思う。
全く根拠のない想像なのだが、最近の音楽商品に似た妙に高品質な音楽となっている。
これは本来、文句のつけようのない出来であって、機材進歩の賜物なのだけれどね。
それぞれに良さがあるので否定ではなく、聞き比べの面白さというところかな。

「可愛い花」のレコーディングは上記の他にライブ盤があります。
ひとつは1972年(昭和47年)の「ザ・ピーナッツ オン ステージ」。
   演奏:高橋達也と東京ユニオン
    

エンディングで歌われたこれは極めて斬新な電子音効果付きアレンジで
いかにも新しい時代にも継続発展出来る曲であることをアピールして
ダイナミックなイメージでパワフルな出来栄えとなっている。
懐古ばかりが古典曲の良さではないとでも言いたいようです。

もうひとつは1975年(昭和50年)の「ザ・ピーナッツ ラスト ライブ」。
「可愛い花」はザ・ピーナッツの代名詞であり、名刺代わりの曲なので
オープニングとエンディングの二回歌われています。
この編曲はデビュー盤と1967年盤をミックスしたような味わいがあり、
素晴らしい技量のフルオーケストラでの豪華なサウンドが支えます。
   演奏:高橋達也と東京ユニオン ウイズ 東京クレモナストリングス
    

常にクールで明るく振る舞い。お客様に涙を見せるようなプロ意識欠如の
恥ずかしい姿など絶対に見せることのなかったザ・ピーナッツがさすがに
最後のステージでは心の動揺が抑え切れなかったのか、オープニングでは
ワンコーラスで終わるところを再びサビのメロディーに戻ってしまうミス
をしちゃいます。ザ・ピーナッツが間違えることがあるのかと驚きました。

そして、アンコール代わりの「可愛い花」では最初こそ涙声混じりですが、
立ち直ったように、ザ・ピーナッツこの世で最後の歌唱を歌い切りました。
もう再び歌うことはないのですが、アンコールを求める拍手が鳴り止まず
録音はそこでフェードアウトしています。お疲れ様でした。

(2019.02.04投稿)